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家庭でのキャリア教育 Vol.1

高校・大学では遅すぎる子どものキャリア教育

大きくなったら何になる?を学ばずにきた子どもたち

中学在学中に指導してほしかった事柄 子どもたちは、幼稚園や小学校の低学年の頃には、「大きくなったら何になりたい?」という問いかけを、周囲の大人から頻繁にされるでしょう。しかし、小学校の高学年や中学生にもなると、ほとんど問われなくなっているようです。
 文部科学省が公立中学3年生に「中学在学時に指導してほしかった事柄」を聞いた報告書があります(図1)。1位は「自分の個性や適性を考える学習」51.9%、2位は「進路選択の考え方や方法」36.1%、3位は「進路に関する情報の入手方法とその利用の仕方」32.8%。
 これは、学校教育では教科学習が主体で、生徒自身やその将来を考えさせる教育はあまりされていないことを反映した結果といえるでしょう。
子どもたちは自分自身をもっと知りたい、将来の生き方をもっと学びたいと考えているのです。

生き方に自信がない日本の高校生たち

日米中の高校生比較調査 日本とアメリカ、中国の高校生の意識を比較した調査があります(図2)。
 「自分は駄目な人間だと思うことがある」という質問に、日本の高校生は73%、つまり4人に3人が「はい」と答えています。それに対しアメリカは48%で2人に1人、中国は37%で3人に1人くらいしかいません。日本の高校生がいかに自分に自信をもっていないかがわかります。
 また「計画をやり遂げる自信がある」という高校生は、日本は38%なのに、アメリカは86%、中国は74%と、どちらも日本の倍の学生が自信を表明しています。
 日本の高校生の多くが「自分は駄目な人間だ、やり遂げる自信がない」と思うのは、小学校や中学時代にさまざまな体験を通じて、自分が本当に好きなこと・得意なことは何か、どのような人間で、どんな人生を歩みたいのかとじっくり考える機会がなかったので、自分の可能性がつかめず、夢を描けず、人生に臆病になっているからです。

親子としての対話不足が働くことに希望をもてない若者を生む

 人生に臆病になった若者たちは、将来、社会に出て働くことに希望をもてないため、定職につかずにアルバイトやパートで暮らすフリーターになったり(図3『2007年版労働経済白書』によると187万人)、職探しも通学もしないニートと呼ばれる無業者(同62万人)になっていくのです。
 あるいは、就職しても中卒の70.4%、高卒の49.3%、大卒の35.7%が、入社後3年以内に辞めてしまうのです。仕事や職場環境に馴染めないと思うと、あっさりと退職してしまい、「7・5・3現象」を生んでいるのです(図4)。そのため、15~24歳の若年失業率は8.0%にも達しています。
 これらの原因には、物質的に豊かな時代に育った若者に人生に対する甘さや我慢のなさがあることは確かです。しかし私は、それ以上に、親が子と進学先・就職先の話はしても、生きることの苦難や感動、働くことで得られる自己成長、社会に出て自己表現するおもしろさなどについて率直に語り合うことが少ないのが問題だと思います。子どもは、最も身近なモデルである親の生き様、働く姿を見て、自分の目標の1人として、また時には反面教師として、生きる意味や働くことの価値を自然に体感していくものです。
 学校で入手する進路情報に加えて、親なりの実体験を通した「生きる知恵を一緒に考える対話」を子どもとすることが大切です。

フリーターの推移

家庭では進学より「子どものキャリア」を考えるのが先

 子どもたちが良い学校に入りさえすれば、将来本当に良い会社に入れ、一生安心して暮らしていけるのでしょうか。景気が回復し、多くの企業が新卒の求人数を増やして「売り手市場」が続く中、5~6社から内定をもらう学生がいる一方で、良い学校の学生でも1社からも内定をもらえない人がいます。不況を乗り越えるためにさまざまな経営努力を積み重ねてきた企業は、人生の目標を定めた意欲的な人材を求めいてるからです。
 したがって、大切なのは、単なる進学や進路ではなく、その前に「どんな人生を歩みたいのか」を考えることであり、「子どものキャリア」について、小さな頃から家庭や学校でよく話し合うことです。子どもが高校生や大学生になり、自信や意欲を失ってからでは遅すぎます。
 「子どものキャリア教育」を学校任せにはできません。これまでの我が子の歩みや性格を知っている親こそが、日頃から子どもと一緒にじっくりと話し合いながら、その子に潜むパワーを少しずつ引き出してあげることが求められているのです。親の夢を無理強いせず、他の子や兄弟姉妹と比べず、その子自身の希望・意欲の芽を握りつぶさず、あくまで「子どものキャリアづくり」の後押しをすることに徹するのです。
 我が子がしっかりと悔いのない一生を送れるように「家庭でのキャリア教育」を充分に行うことが、親が子に示せる何よりの愛情表現でしょう。

家庭でのキャリア教育は実体験とコミュにケーション能力を

 「キャリア教育」とは、職業観を育てるために「働く意味」を教えることです。小学生なら、自分は何が好きかを考えさせる機会をつくり、好きなことと社会(地域)とのつながりを実感させましょう。中学生なら、好きなものと自分の将来・社会の動きとの関係を体得させましょう。
 家庭での子どものキャリア教育のポイントの1つは、学校で行う進路情報提供や社会見学・職業体験とは違って、親が自分自身や知人・地域の人々の仕事の成功例や失敗例、ボランティア活動、ユニークな生き方などを具体的にあげながら、その苦労や喜びのドラマを、子どもに生き生きと伝えることです。そして、子どもが興味をもった仕事は実際にその職場を見せたり、そこで働く人の話を聞かせたりして、子の漠然とした興味を絞り込み、明確な関心テーマに深める手助けをする。つまり「手づくりの実体験による生き方・働き方プランニング」です。
 もう1つのポイントは、自分の好きなことを仕事にしたり、社会で実現していくために不可欠な「コミュニケーション能力を養う教育」です。
 核家族化・少子化が進み、クラブ活動・塾通いで多忙な子どもたちは、人間関係が細切れで希薄になっているため、人に的確に自分の気持ちを伝えたり、人の話を充分に聞き取るコミュニケーション能力が欠けていると言われます。また、相談できる兄姉・先輩や、友だちがいないし、親や先生にも思いを告げられず、自分1人で悩んで閉じこもったり、楽な世界に逃避したり、逆に切れて攻撃的になったりする子が増えています。
 いくら好きなことを見つけ、能力・技術を身につけても、人とコミュニケーションできる能力が欠けていると、社会で働くことは困難だと教えるのは、親の務めです。まずは、親子のコミュニケーションがよくできているかを見直してみましょう。


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連載バックナンバー
家庭でのキャリア教育 Vol.5 2008年4月 1日
家庭でのキャリア教育 Vol.4 2008年3月19日
家庭でのキャリア教育 Vol.3 2008年3月 5日
家庭でのキャリア教育 Vol.2 2008年2月 8日
家庭でのキャリア教育 2008年1月28日
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