実社会の動きを子どもと一緒に学ぼう
就職希望者の4%が就職できず、大卒の8人に1人が就職も進学もしない
厚生労働省と文部科学省の調査によれば、2007年4月1日現在、就職内定率(就職希望者のうち就職が決まった人の割合)は、高校卒が96.7%、大学卒が96.3%。いずれも約4%、つまり25人に1人が就職希望なのに就職できないという結果になっています。
長年、卒業イコール就職が当たり前だった日本では、この現状は問題であり、本人だけでなく、保護者や教育者、社会全体にも深刻な影響を及ぼしています。
また、文部科学省の『学校基本調査』によると、1990年代後半から、大学卒業後に「就職した人」の比率が減り始め、「大学院等への進学」はほぼ横バイです。これに代わって「就職も進学もしていない人」が2007年は12.4%(約7万人)、なんと8人に1人と増えています(図1)。
「就職も進学もしていない人」の中には、専門学校への入学や家業従事なども含みます。しかし、1991年の大卒者の就職率(卒業生に対する就職者の割合)は81.3%だったので、2006年に63.7%になったというのは、この15年で、就職率が激減したことがよくわかります。
企業は「正社員」と「非正社員」を選別して採用する
若者の就職率が激減している理由の1つには、卒業後の進路の選択肢が増えて、必ずしも全員が就職を希望しない傾向が強まっていることが挙げられます。
しかし、それ以上に懸念されるのは、就職したくても就職できない状況です。それは、今、「正社員」として就職できない雇用環境に置かれているということです。
厳しいビジネス競争の下、企業は少数の優秀な学生を「正社員」で採用して主要業務を任せ、派遣社員やパート、アルバイトなどの「非正社員」で補助業務をまかなう「雇用の選別化」を進めています。能力のある学生は、高い給料を払ってでも会社の将来を担う人材として採用し、賃金が安くてすむ非正社員は、単純作業や補助的な仕事の人員として雇って人件費を抑え、効率的な経営を行うのです。
今の企業には、バブル期のように社員を大量採用し、入社後に自社に貢献する人材としてジックリ育成する余裕はありません。そのため、企業は最初に「成果を上げることのできる人材」を選別して「正社員」として少数採用するため、どこにも就職できない学生が多数出てしまうのです。その一方、数社から採用通知がくる学生がいて、就職の明暗が2極化しています。
「正社員」が減り、社員の3人に1人は「非正社員」だ
「雇用の選別化」は新卒だけではなく、全社員に対して行われており、この傾向は年々強まっています。1995年に79%だった「正社員」の割合は、2006年には67%に減少し、逆に「非正社員」の割合が全勤労者の3割に達しています(図2)。
「非正社員」の雇用形態も、契約社員、派遣社員、パートなど多様化しており、労働条件の異なる人たちが1つの職場で共に働くことが当たり前の時代になっています。
中には、契約社員や派遣社員などから、日頃の勤務態度・実績を認められて、後に「正社員」として採用される人もいます。
しかし、多くの「非正社員」は、1つの職場で同じように働いても、給与のほか賞与や、社会保険、福利厚生などが保障されている「正社員」に比べ、労働条件は良くありません。
正社員の4分の1の収入しかない、フリーターになるな
15~34歳の「正社員」の平均年収が387万円であるのに対して、パートやアルバイトの「フリーター」の平均年収は106万円で、「正社員」の3割にも達しません(図3)。
また、生涯賃金で比較すると、高校を卒業してから60歳まで「正社員」として働き続けた場合と、同じ時期を「フリーター」で働いた場合とでは、実に4倍近い格差が出ます。「正社員」の賃金は、勤続にともなって50歳くらいまで上昇しますが、「パートやアルバイト」は時給であり、その時給もある程度の勤続で頭打ちになるため、このような賃金格差が生じるのです。
さらに、老後にもらう年金を比べると、「正社員」には国民年金と厚生年金が、企業によっては企業年金が支給されます。これに対して「フリーター」には、国民年金しか支給されません。
そのため、「正社員」と「フリーター」がそれぞれ40年間保険料を納めて受給する年金額は、「正社員・単身者」が月額14万6000円、「フリーター・単身者」が6万6000円で、2倍以上の開きが生じています。
「フリーター」の中には、所得が低いことから、将来、家庭をもつことがむずかしい人や、国民年金保険料を納めていないため年金を受給できない人が出ることが問題視されています。
しかも、「フリーター」は主要な業務を任されることがないので、自分の能力を向上させたり、技術を磨く機会も少ないのが現状です。
だから私は、就職を希望する若い人たちに、
「フリーターにはゼッタイなるな!」
「簡単にあきらめず精一杯、正社員になる努力をしろ!」
「やむを得ずフリーターになってしまった場合は、人一倍フリーター経験を積んで、できれば卒業後1年以内に(中途・随時)採用試験を受け、正社員になれ!」
と、声を大にして言い続けています。
責任のある立場・仕事を通じてこそ、自分のキャリアが築ける
企業が進める「雇用の選別化」、「正社員」の減少でますます厳しくなる希望どおりの就職、「正社員」と「フリーター」の格差など、実社会の動きについて、日頃から、保護者は子どもと一緒に関心をもち、新聞・雑誌やテレビで情報収集しましょう。
また保護者は、自分が働いている会社や知人の仕事の話をイキイキと子どもに伝えて、子どもが「自分の好きなこと・やりたい仕事をさがす」支援をすると同時に、社会人としての責任(正社員として重要な役割・仕事をし、税金・保険料を支払うなど)を果たすからこそ、「自分のキャリアが築ける」ということを教えることが大切です。
「責任ある立場・仕事を通じてこそ、自分の能力・技術が磨かれ、社会の中で苦労や努力を積み重ねるからこそ、キャリアが築け、将来設計を描ける人生を歩める」と、保護者の言葉で伝えましょう。それが、家庭でのキャリア教育です。

2008年2月 8日


























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