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家庭でのキャリア教育 Vol.3

「自分の夢」を実現させるために社会が求める人材に育てよう

どんな子どもにも「自己実現」の欲求があるはず

家庭でのキャリア教育 Vol.3 図1アメリカの心理学者であるA.H.マスロウは、人間には「欲求の5段階」があり、より高い欲求を満たしたがると言っています(図1)。
 第1段階は「衣食住などの物質的な欲求」、第2段階は「安全や安定の欲求」で、これらは生きる基本となる最低限必要な欲求です。
 第3段階は「社会の中で暮らす欲求」、第4段階は「社会で認められる欲求」で、これらは自分と他人との良い関係を築きながら自分の存在を確認したいという、集団の中で人間らしく生きる欲求と言えます。
 そして、最終の第5段階は「自己実現の欲求」で、第1・2段階の生活環境の確保と第3・4段階の社会的な人間関係づくりがはかれた後に、さらに自分の可能性を追求し、真に自分らしく生きたいという欲求です。
 中学生・高校生たちの多くは、今はまだ自分のもつパワーや適性がよくわからず、将来の夢が描けなかったり、社会との接点が少ないため、社会人として生きる責任や喜びをあまり自覚できないでいるでしょう。
 しかし、どんな子どもにも、心の奥底には、自分がもつ能力を発揮して自分らしく生きたいという第5段階の「自己実現の欲求」が潜んでいるはずです。たった一度の大切な人生なのですから、親は、自分の考えを子に押しつけたり、前面からギューギューと手を引いて子を導くのではなく、子どもを「自ら自己実現できるような人材」に育てること、そのための後方支援が必要です。

「自己満足」と「自己実現」は違うと教えよう

 「自分の好きなこと」を好き勝手にやるのは単なる「自己満足」で、趣味や娯楽の世界ならそれでいいでしょう。しかし、「自己満足」でしかないものを一生の仕事にするのはむずかしいし、「自己満足」だけでは「自己実現」ははかれないということをハッキリと子どもに伝えることが必要です。
 「自己実現」をするためには、好きなことをトコトンやり抜く「情熱」をもち、「適性」や「能力」を磨くとともに、好きなことへの取り組みが社会の人々に充分に理解され、高く評価されなければなりません。前述したように、自分の好きなことが「社会的にも価値ある活動・仕事」だと認められたとき、「自己実現」がはかれることになるのです。
 したがって、わが子が好きなこと、やりたいことを見つけたら、それが世の中ではどのような位置付けにあり、どのような意味をもつのかと、広い視野から眺めさせましょう。そして、自分の好きなことが他の人にも好感をもってもらえ、社会の中でもより必要とされるには、好きなことをどのように形で表し、仕事に結びつけていったらいいかを考えさせましょう。
 人間は、自分一人だけでは生きられず、人と交わってこそ成長できるのです。だから、常に「社会の中で生きる自分」を意識させ、「他者理解・満足」を得ることから「他者との交流」が始まり「他者からの協力・支援」が得られ、「社会の中で生きる喜びやおもしろさ」を味わうことができるのです。

 このように、親は子に対して、「学校から社会に出ていくと、人生が大きく動き出し、自分の可能性がふくらんでいく」と言って、社会への扉をそっと開き、自己実現の第一歩を踏み出させてあげてください。

企業は第1に「コミュニケーション能力」を求めている

 企業は、新卒者に何を期待しているのでしょうか。
 企業が新卒者を採用するときに重視している点を602社にたずねた調査(日本経団連「大学等新卒者採用に関するアンケート調査」2006年10月)によると、最も重視しているのは「コミュニケーション能力」(81.7%)で、次に「チャレンジ精神」(53.7%)、「協調性」(53.0%)という結果になりました(図2)。
 第1に求められている「コミュニケーション能力」とは、周囲の人たちとスムーズに意思疎通を図れる能力ということで、1つの職場に異世代、異職種の人が一緒に働く企業社会では、なくてはならない能力です。
 しかし、若者の多くが核家族で育ち、学生時代は同世代の気の合う友だちとしか付き合ってこなかったため、他者とのかかわりが苦手で、家庭や学校で充分なコミュニケーション能力が養われてこなかったと言われています。自分の言いたいことをうまく表現できず、人の話もきちんと聞けない若者が増えているのです。
 したがって、社会生活を送るためにも、自分の夢や目標を皆にわかってもらい自己実現を目ざすためにも、子どもには、まず「コミュニケーション能力」を身につけさせることが不可欠です。

家庭でのキャリア教育 Vol.3 図2 

「前向きな姿勢」の若者しか必要とされない

 第2・3位に若者に求められた「チャレンジ精神」、「協調性」は、さまざまな人と異なる立場・役割・意見などの調整をしながら、自らすすんで仕事に挑戦する前向きな姿勢です。かつて若者を「指示待ち族」と呼んだ時代がありましたが、上司や先輩の指示を待って動くだけではなく、自分からも質問や相談・提案などをして周囲の人々に働きかけ、積極的に仕事に取り組む姿勢が、企業では必要とされるのです。
 ある大学の就職担当職員は、「企業は、主体性をもって活動した成功体験のある学生を求めている」と、最近の採用傾向を話していましたが、どのような活動でもいいから、学生時代から自ら自分の可能性に挑む「チャレンジ精神」や、さまざまな人々と協力し合ったり、一緒に活動するための「協調性」を養い、小さな成功体験をたくさん積んでおくことが大切です。

「大学名」や「大学での成績」はあまり重視されなくなった

 一方、企業が採用基準としてあまり重視しなくなった項目は、「大学名」や「大学での成績」などです。
 つまり、激変する時代に企業が生き残っていくためには、新しい仕事や企業の再生を担える若者のパワーが必要なので、採用時は、その新卒者の過去の経験よりも、これからどこまで成長していけるかという将来の可能性に重きをおくようになってきたのでしょう。
 その可能性を伸ばすのが、周囲から学ぶための「コミュニケーション能力」や「協調性」であり、自ら学ぼうとする「チャレンジ精神」や「主体性」だと思います。
 今や、「自己実現」を目ざすことが自己の成長を促し、自分(社員一人ひとり)が成長することが企業の成長に結びつくという、実力主義の時代です。
 子どもに潜む可能性を大いに信じて、親として、キャリアを積めるようにその可能性を伸ばすための基本能力・精神を養ってあげてください。

 


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家庭でのキャリア教育 Vol.5 2008年4月 1日
家庭でのキャリア教育 Vol.4 2008年3月19日
家庭でのキャリア教育 Vol.3 2008年3月 5日
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家庭でのキャリア教育 2008年1月28日
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