第3回 チカラの礎となるもの
学び取る力の源泉「集中力」
わたしたちは社会の中で、仕事や生活を通じて、周囲からの信頼と共感(クレジット)を得、自由度を上げることで、自分の人生を切り拓いていくことができます。
人生においては、この「クレジット」のレベルを上げていくことが非常に重要。その原動力となるのは、第2回でお話した「情報処理力」と「情報編集力」だとわたしは考えています。
そして、これら2つのチカラの基礎をなすのが、ここでお話する「集中力」と「バランス感覚」です。この2つは、今のうちにこそ、ぜひ子どもに身につけておいてほしいチカラです。
「集中力」に関しては、言うまでもないでしょう。その重要性を実感されているお父さん、お母さんは、きっと多いはずです。
「集中力」があれば、何でも自分のものにできます。
勉強や部活や趣味だけでなく、将来何らかの職業に就いたときにも、「集中力」があれば、必ず活躍することができるでしょう。とくに、小学校の段階で「集中力」を身につけた子どもは、それ以降、どんな方向に興味が向いても、それをものにするはず。
逆に、小・中学校で「集中力」を身につけられなかった子どもが、大きくなってからそれを身につけた、という例はあまり見かけません。実際、わたしがこれまで出会った「できる」仕事人たちの中に、「ビジネスを通して集中力を鍛えました」という人はいませんでした。ビジネスの現場にいる方々の中にも、そんな話を聞いたという人はいないのではないでしょうか。
「集中力」を鍛える、という点で言えば、陰山英男さんの百ます計算や、齋藤孝さんの「声に出して読みたい日本語」の音読などは、有効な手段のひとつとして挙げられると思います。これらの学習法が評価されているのは、短期的な教科力を高めながら、同時に、長期的に有効な「集中力」も鍛えているからでしょう。もちろん、学校の中にも、「集中力」の重要性を認識し、それを高めるための有効な手だてをもっている先生はたくさんいます。
「集中力」は、学び取る力の源泉だと言ってもよいのです。
世界観を広げるための「バランス感覚」
もうひとつ、ぜひ身につけておいてほしいのは「バランス感覚」です。
ここで言う「バランス」とは、物理的なものだけでなく、[よのなか]と自分自身との関わり方のことを指しています。
たとえば、自分が周囲を取り巻く学校や地域社会と、どうつながっているのか。
ある場所で起こった社会的事象と、他方で発生した現象とは、どう関連しているのか。
友だちや近所の人と自分との間には、どれくらいの距離感があるのか。
そういったことをイメージし、「自分と周囲のすべての環境との関係をバランスよく構築できる感覚」こそが、わたしの考える「バランス感覚」です。
しかし、急激に変化する今の社会のなかで、この「バランス感覚」をうまく鍛えることは、以前に比べて格段に難しくなっています。わたしたちの時代には見られなかった子どもの基礎体力の低下傾向、友だちとのコミュニケーション・距離の取り方の変化などは、都市社会において、地域社会を含むすべてのシステムが分断された結果、起こっているように思えます。
以前なら「ふつうに」あった地域の人との多様な関係。祭りなど、大人になるための通過儀礼。思い切り体を動かせる空き地や原っぱ。わたしたち親の世代までは、そこで自然に「バランス感覚」を学ぶことができました。
しかし、それらの「懐かしさ」を感じさせるものがなくなった現在、子どもは、周囲の世界と関係を結ぶ技術を、スムースに学ぶことができなくなっています。親は、このことをもっと強く意識すべきだと思います。
テレビとケータイの「罪」
最後に、「集中力」と「バランス感覚」に重大な影響を与える、2つのものについてお話したいと思います。
ひとつは「テレビ」です。公立中学では現在、年に約800時間の授業が行われます。一方、ある調査によれば、中学生のテレビ平均視聴時間は1日2時間から3時間以上です。これは年間で800時間以上にもなり、学校で勉強しているのとほぼ同じ時間、場合によってはそれ以上、テレビを見ている計算になります。
テレビは「刺激にあふれた情報の洪水」。情報を得るために積極的に視聴している場合を除き、テレビを見ている間、脳はほとんどその機能をフリーズさせていると言ってよいでしょう。テレビを見過ぎることは「集中力」にダメージを与え、何より、リアルな体験によって獲得される「バランス感覚」にも重大な影響を与えます。
もうひとつは「ケータイ」。わたしは決して「子どもに携帯電話は必要ない」と言っているわけではありません。ただ、使い方についての「ルール」を親子間で決め、子どもに自己管理を促すような方法があるのではないかと思います。
たとえば、親の分を貸し与え、家に戻ってきたら返させる、夜9時以降は電源を切る、など、何らかの約束ごとを決めてはどうでしょうか。携帯電話は確かに便利ですが、同時に「いじめ」問題を見えなくしているのも事実です。
テレビやケータイに依存せず、今やるべきことにすぐモードチェンジできるような「生活のリズム感」を身につけること。これこそが、子どもの「集中力」と「バランス感覚」を鍛える、またとない訓練になる。「テレビ&ケータイ中毒症」にかからせないよう、十分注意してください。

2008年4月 1日


























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